ローマ環状線と東京環状線


バスを待っていたら、誰かの鼻歌が聞こえてきた。
そんな忘れてしまいそうな他人事なのに、不思議と余韻が残る。
日常の切り抜きを繊細な感性で描いた映画は、人生に結論がないことを感じさせます。




この映画を観た後、都心の雑居ビルの3階の窓から撮影した写真。忘れられた三角地帯。木の下を倉庫にする謎の男、残された太鼓台の下で佇む人。東京環状線の人生が行きかう。



機内映画館

 機内映画館4本立ては、話題作・コメディ・映画館で見逃したもの、+恋愛もしくはアクションときどき邦画の組み合わせが飽きなくてよい。5本目は上映時間を確認しないと、途中で到着してしまうおそれがある。残りの時間は落語を聞いて笑って過ごす。

まずマシューマコノヒーの激ヤセが話題の「ダラス・バイヤーズ・クラブ」。法・犯罪・正義・差別・良いも悪いも誰もがすべてを含んでいて混沌としたなかに世界の縮図を見る映画だった。美とかストーリーとか迫力よりも存在を優先する映画や俳優が増えると嬉しい。


ケビンクライン・シガニ―ウェーバーで、大統領のそっくりさんの身代わりで・・という「デーヴ」はストーリーも笑いも予想通りというリラックス感。


「鑑定士と顔のない依頼人」は以前から見たかった美術オタクの話でしたが、最後にどんでん返しで、主人公が「どうだっ!オタクを侮るな!」という内容のエンディングにしてほしかった。せっかく洒落た映画なのに・・ラストの退屈さにブツブツ。


美しい絵の崩壊」はピンとこない題名だと思いましたが、「Two Mothers」の原題でこの邦題を考えた人はさすが!

映画を観ていると何が美しい絵で、何が崩壊なのか・・様々な解釈ができる。美しい映像や人物に惑わされそうだが、沈黙のシーンに理屈では語りきれないものを含んでいる・・この邦題で深みに導きたかったのだろう。




イタリア映画祭と映画をめぐる美術

 10年来、イタリア映画祭はGWの定番だ。マフィアの殺し屋と盲目の女性の物語『サルヴォ』は極端にセリフの少ない映画だが、音楽や場面の関連性を巧みにつかい、人間の深い情感や潜在的な強さが描かれていて印象深かった。画面や言葉に表されていない部分―たとえば登場人物の生い立ちや過去にあった出来事など・・実際にはないことなのだが、これらの設定が演じる人の中にあることは重要だと思う。

東京国立近代美術館『映画をめぐる美術―マルセルロータスから始める』で映像に静止した画面を探すという項目が興味深かった。映画を観たときのあの場面・・シンディ・シャーマンなら『サルヴォ』のどの場面を選ぶだろうか?などと考えると楽しい。

「サルヴォ」

「映画をめぐる美術」

猿の惑星

機内で最新作「猿の惑星/ジェネシス」の後に2001年のティムバートンの「PLANET OF THE APES/猿の惑星」を観ました。ジェネシスのチンパンジーが主人公に「僕はペットなの?」と聞いたのが印象的で、ちょっとせつない映画でした。

そういえば人間がペットや飼育以外で動物と付き合うことはあまりないように思います。
インドでは会社か役所にいたずらな猿が入ってきてコピー機や書類をめちゃくちゃにするので、利口な猿を雇って追い払うようにしていると聞いたことがありますが。そういえばインドのヒンズー教に猿の顔の神様がいました。映画の中の猿の酋長にそっくり。

何年か前、北海道の友人の実家にクマが出た時、男の人たちが怖くてほとんど歩ける状態ではなかったと聞き驚きましたが、今年は札幌に何度か出たといいます。
以前山登りの最中に大きな鹿があらわれた時は、まさに「出た!」でした。
あの時はとっさに逃げましたが、もしも映画のような猿の大群が出たら、腰を抜かすでしょうね。
そういえば奈良公園の鹿に、何もしていないのに通り過ぎようとしたら追突されたことがありました。人ごみのストレスだったのかもしれない、かわいそうに。ナドナド..思いながらウトウト睡眠。14時間空の上、もっとなにか他にも考えることがありそうですが。

今回の渡米ではめずらしくNYの空気が澄んでいるように感じられました。
いつもは空気が悪いと思うのに不思議。
しかも、成田空港から外に出たら空気が淀んで息苦しい。他の人も言っていたので気のせいではなさそうです。
きっと数日で慣れるでしょうが、動物にも人間にも良い環境ではなくなっているのはたしか。

ウッディアレン監督 人生万歳

恵比寿ガーデンシネマが休館になると聞いた。

近い将来、再開してくれるのだろうと思っているが、どうなのか?


ここのウッディアレン作品には何度か足を運んだ。

小規模でゆったりとした雰囲気の劇場と洗練されたユーモアや独特な日常的開放感のある作品はよく似合っていた。


「人生万歳」は前作の「それでも恋するバルセロナ」同様に中年男性と女性、周囲の人たちの奇妙な人間ドラマだが、マンハッタンでは日常にありそうだ。


やはりウッディアレン作品の舞台はバルセロナでもロンドンでもない、

マンハッタンだと思った。


インタビューによるとニューヨークでの撮影はコストがかかりすぎるらしい。


次回はパリが舞台らしいが、どこの劇場で観ることになるのかしら。




”人生万歳”の丸いパンフレット。主人公の中年物理学者の愚痴、辛辣な悪口の長台詞。

ネガティブ発言の連続が、こんなに笑えるとは。

終わると気分がよくなっているから不思議。



モノクロの魅惑/鬼火・死刑台のエレベータ

 ルイ・マルのモノクロを生かした美意識と、人間の内面に深く入る演出を感じさせる2作品だった。

モノトーンは実際の生活とは違う世界だ。
鬼火では主人公の空しさがモノクロの生活空間に落とし込まれ、観客を彼の内面の不安定に彷徨わせる。
死刑台のエレベータでは、暗闇と、ヘッドライトや炎などの光の対照が際立つ。

そしてジャンヌモローとモーリス・ドネの光を反射する目が、せりふの少ない中に印象的に輝き、彼らに俳優としての格を与えている。

音楽と映画の関係は、余り近寄りすぎると野暮になるものだが、鬼火のエリック・サティ、死刑台のエレベータのマイルス・ディビスの旋律はそのきわどい線を画像と共に歩き、もう一人の主役を演じる。

DVDの時代でも、死刑台のエレベータが館の上映で観られるのは嬉しい。日本でも最近リメイクされたと聞くが、こちらは1957年の作品。
渋谷のイメージフォーラムではルイ・マルの他8作品も特別上映されている。

http://www.zaziefilms.com/shikeidai/


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