「ふ〜ん」の本


夜、寝る前に本を読むと落ち着くのは幼いころからの習慣だからか。

よい眠りにつくためには本選びに注意を払わなくてはならない。

寝る直前の記憶は定着するので語学がよいと聞くが、もう一つ単語を覚えようなどと欲が出て脳が活性化するおそれあり。

推理・恋愛小説は先が気になって寝不足になるし、悲しみや怒り、感動で気分が高揚するものは目がさえてきそうだ。

睡眠用本の選定にはコツがいる。

どの章からでも読むことができてほどほどの長さで完結し、それなりの達成感を感じる。つまり辞書的感覚で「ふ〜ん。なるほど」と読み終えて執着なく眠りにつけるもの。

最近のお気に入りは北山修の「意味としての心」。普段使っている言葉の再認識に「ふ〜ん。たしかに」とその都度納得する。

先日まで横になりながら中国文化史大辞典を読んでいたが、ある日ついウトウトして本に頭を挟まれ目が覚めた。重たい本は要注意(笑)




 


スティーヴン・ストロガッツ「SYNC」

 一気に読む本。時間をかけてじっくりと、もしくは睡眠の前に拾い読みしたい本もある。

それらを何冊か並行して読み進むのが常なので、机や枕元の台にはいつも読み散らかし状態の本が積み重なっている。

最近の一気読みはスティーヴン・ストロガッツ「SYNC」(シンク)。蛍の集団同期については3年前に読んだ蔵本由紀の「新しい自然学―非線形科学の可能性」の中にも書かれていたが、写真集「心像」の蛍の撮影の際に、シンクロ(同期)の様子を初めて自分の目で見て実感した。また、もっと大きな範囲において、人間や自然の同期現象を感じることがあったので興味深かった。現代の“知”に抑圧された日の当たらない場所を明るくする本です。


日本の書

新年、あけましておめでとうございます。

お正月にじっくり楽しみたい本
別冊太陽191 日本の書 監修 名児耶 明 平凡社刊
は古代から江戸時代の書についてわかりやすく、かつ詳しく解説された入門書です。
名品の原寸大図版は、書の迫力を堪能できます。

明恵上人 夢の記(京都高山寺蔵)についてエッセイを執筆させていただきました。この夢の記に描かれている廬舎那仏を見てから、2.3年おきに明恵の夢の記、写経、肖像画などを手にするようになりました。また、明恵つながりで素敵な方々との出会いもあり、わたしにとって印象深くさまざまな思い出につながる書なので、執筆の機会をいただいて、とても嬉しかったです。

明恵上人といえば、弟子が描いたとされる肖像画「明恵上人樹上坐禅像」はよく知られています。宗画風に描かれた図は異国からの雰囲気を醸し出し、明恵上人が釈迦に近い存在であることを示しているようです。高僧の肖像画は構図や描かれている事物に宗教的が意味がありますが、樹上坐禅像図も例外ではないと思います。そう考えて眺めるとさらに興味が湧きます。ダビンチのモナリザの背景からモナリザの体を流れる水の説のように、明恵の自然や宇宙、人の関係に向けたまなざし、また釈迦の正法への思いが見えてくるようです。








仏教版画と明恵上人の本

最近読んだ本を2冊。 

仏教版画について詳しく書かれた本は意外と少なく図版中心のものが多いのですが、《日本仏教版画史論考 内田啓一著 法蔵館》は初心者から詳しく知りたい方まで読み応えのある本です。著者が町田国際版画美術館の学芸員だった時に何度か講演を聞きに伺いましたが、突然ピザまんのたとえ話が飛び出すなど楽しくわかりやすいお話で人気でした。本書にはその種の話はなく、残念なような、安心のような…。少し前までは版画美術館の仏教版画入門がお勧めでしたが、発行部数も少なく新たに入手するのが困難になっていました。でも、もうこれがあれば大丈夫。版画だけではなく、版木も掲載されています。


明恵上人に関する本といえば奥田勲著の「明恵 遍歴と夢」を何度も読み返していますが、今年出版された《明恵 和歌と仏教の相克 平野多恵著 笠間書院》 は明恵と和歌について書かれた本で、ようやく読み終わりました。厚い本です。でも、面白い。

修行と和歌、西行歌との関連など、特に興味深いです。

去年から俳句を始めたのですが、書いては「あっやっぱりやめた」とペンで上からぐじゃぐじゃ。明恵上人もやっていたのですね。“ぐじゃぐじゃ”と。

仏教美術の本2冊

「戯れの骨董 うたかたの仏教美術」淡交社刊の著者、山本野人氏はお医者様でありながら、古美術の重症患者と思われる。
ページをめくると残欠の王様の数々をはじめ、私の大好きなものばかりで「入札させてください」と思わず言ってしまいそうだ。
愛情たっぷりのわが子なる古美術品へのテレ交じりの褒め言葉、そしてちょっと鋭い山本さんの辛口ロマンチストの一面やチャーミングな人柄があらわれた本。付箋紙でいっぱいになりそう。たった今、読み終わった。


もう一冊は、真言密教スペシャリストによる「弘法大師御影の秘密」青山社刊。
宗教者の立場からわかりやすく、そして本格的に弘法大使の御影について研究、詳細に解説をした本で興味深い内容だ。
巻頭には著者の山路天酬氏が発願した弘法大師御影や水瓶、琥珀の念珠、御木履がカラー写真で掲載されていて、清々しい。
山路氏は僧侶として関連書を執筆する傍らで、古美術にも詳しく、自ら古器に花を生け、書家でもある

ピカソとゴーギャンの挿絵/ はやま文庫

 英語の先生から「もっと英語の本を読みなさい」と言われて色々読んでみるが、催眠術や睡眠薬に匹敵する効き目である。

興味のあるものの方がよいかと思い美術書を読み始める。

なんとなく内容に予想がついてすらすらと読んだ気になるが、できれば小説の方がいいと勧められ、本屋をのぞいて歩く。


ピカソの挿絵の戯曲LYSISTRATAはギリシャの喜劇で、銅版画がおさめられた1934年のオリジナルは高価だが、こちらは1962年に本として出版されたもの。


サマセットモームの月と六ペンスは、主人公のモデルのゴーギャンの絵を挿絵に使うというアイディア本。


「日本の巨匠画家の挿絵本にはどんな本があるのだろうか…。」と考え、すっかり英語の勉強を忘れている。













紀元前385年頃のアテネの詩人アリストファネスの書いた喜劇「リシストラータ(女の平和)」Gilbert Seldesによるニューバージョン。 Pablo Picasso とのコラボレーション。







ゴーギャンモデルの主人公が顧客に絵を見せる場面。イーゼルの上にはゴーギャンの絵の画像が埋め込まれている。

 




Album of Japanese Sculpture  / はやま文庫

 NYに 滞在中の休日、7年間ほとんど同じ繰り返しを過ごしている。
早朝にヨガクラスで汗をかいた後、にんじんとフルーツを搾ったジュースを飲み元気になった気分で美術館や古本屋巡りをして、あっという間に午後が過ぎていく。

数件のお気に入りの古書店には時折、日本の戦前の古美術品売り立て目録など、意外な本がある。


最近見つけたのはAlbum of Japanese Sculpture という美術出版社から出版された“日本の彫刻”の英語版。日本版と装丁がちがうのでつい買ってしまった。土門拳、藤本四八、坂本万七による大判の写真と古い印刷が味わい深い。

6冊組で出版されたが、入手できたのは縄文、鎌倉、平安時代の3冊。


細部まで明確に記録しようとするのとは違う、写真家の視点と土偶や仏像に対する思いが伝わってくる。


古代と葡萄 其の1 ルバイヤートの詩 / はやま文庫

 映画“サイドウェイ”で、ジオマッティ演じる主人公の味わうワインは、最初はおいしく飲むが、最後はいつも彼の人生のように苦い。好きな女性にワインについて語る場面で“古代の味がする”という台詞が印象に残る。

葡萄模様は古代ローマ、エジプト他、様々な国の美術、建築に使われ、シルクロードをわたり、日本に流れ着いた。

白鳳時代の岡寺の瓦にも美しい葡萄唐草が施されている。


古代より葡萄は神への捧げ物とされ、ペルシャの詩の中には葡萄酒は陶酔をもたらす神とするものもある。


11,12世紀の詩人オマル・ハイヤームの“ルバイヤート”の詩を思い出す。

19世紀に英訳されてから欧米では様々な美しい装丁の限定版が出版され、愛読された。

ルバイヤートは4行詩という意味。英国の詩人フェッツジェラルドによる訳でヨーロッパに広がる。様々な装丁は美しい。以前の持ち主達が愛読した様子がうかがえる


―“ルバイヤート”の中から―

 

エデンの園が天女の顔でたのしいなら

おれの心は葡萄の液でたのしいのだ

この世でうけとる楽しみは、あの世の約束に勝る

遠くで聞く太鼓の音がよいのだ

       ◆

青春のめぐり来るこの日

酒を飲もう 酒こそわが喜び

その酒が苦くとも、とがめるな

私の生命だから苦いのだ

 


 

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